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BUNTABI Project

BUNTABI = 文旅 / 偉大な文筆家たちの美しい文章を通じて、過去の日本を旅するProject

板谷峠

場 所:福島 山形 板谷峠

作 者:若山牧水

作 品:渓をおもう

初 出:不明

季 節:夏

 

蒼空を限るような山と山との大きな傾斜が相迫って、そこに深い木立をなす、木立の蔭にわずかに巌があらわれて、苔のあるような、無いようなそのかげをかすかに音を立てながら流れている水、ちいさな流、それをおもい出すごとに私は自分の心も共に痛々しく鳴り出づるを感ぜざるを得ないのである。

 

(中略)

 

福島駅を離れた汽車が岩代から羽前へ越えようとして大きな峠へかかる。板谷峠といったかとおもう。機関車のうめきが次第に烈しくなって、前部の車室と後部の車室との乗客がほとんど正面に向き合うくらい曲り曲って汽車の進む頃、深く切れ込んだ峡間の底に、車窓の左手に、白々として一つの渓が流れているのをみる。汽車は既によほどの高所を走っているらしくその白い瀬は草木の茂った山腹を越えて遥かに瞰下されるのである。私のそこを通った時斜めに白い脚をひいて驟雨がその峡にかかっていた。

 

■一言

板谷峠は現在、JR幹線の中で最も急な勾配を有しているそうである。

 

■関連リンク

 ▶板谷峠俯瞰写真展

 ▶若山牧水 - Wikipedia