BUNTABI Project

BUNTABI = 文旅 / 偉大な文筆家たちの美しい文章を通じて、過去の日本を旅するProject

雨飾山

場 所:長野

作 者:深田久弥

作 品:日本百名山

出版年:1964年

季 節:秋

 

(引用)

ついに私は久恋の頂に立った。しかも天は隈なく晴れて、秋の午後三時の太陽は、見渡す山々の上に静かな光をおいていた。すべての頂には憩いがある。梢にはそよとの風もなく、小鳥は森に黙した。風化し磨滅した石の祠と数体の小さな石仏の傍らに、私たちは身を横たえて、ただ静寂な時の過ぎるのに任せた。古い石仏は越後の方へ向いていた。その行手には、日本海を越えて、能登半島の長い腕が見えた。一休みして、私たちはもう一つのピークの上へ行った。案外近く、三十米ほどしか離れていなかった。下から眺めてあんなに美しかった、その二つの耳の上に立った喜びで、私の幸福には限りがなかった。

 

(一言)

それ以前、作者は二度登頂に失敗している。一度目は途中で登山路が切れており断念。二度目は連日の雨による断念。引用は3度目のもので喜びも強かった。「山は心をあとに残す方がいい、と言った人がある。一ぺんで登ってしまうよりも、幾度か登り損ねたあげく、ようやくその山頂を得た方がはるかに味わい深い。私にとって雨飾りがそれであった」という。人生訓のようでもある。

 

(関連リンク)

長野県小谷村の観光公式サイト

http://www.vill.otari.nagano.jp/kanko/nature/amakazari/